台湾法セミナー6月4日(月)、台湾の輔仁大学から呉豪人恭順を招聘し、「台湾における修復的司法」というテーマで、講演をしていただきました。

修復的司法(restorative justice:RJ)とは、わが国では刑事裁判における加害者と被害者の和解を志向する新しい刑事司法モデルを意味します。

一方台湾では、RJは「修復式正義」と訳されます。これは実定法的意味での「司法」よりも、自然法的な「正義」への憧れの方が強いためと考えられます。そして、司法改革の重要性もさることながら、民主転換期に起きた歴史的不義への清算の実践に関心が集められ、RJもこのような意味で使用されることになりました。

(右)講演の様子RJを実現するためには、自然法論の復興によるキリスト教教義の再解釈と、先住民族の修復的法文化・法慣行の2つが有利な条件と考えられます。

台湾のキリスト教信者は人口的にはわずかですが、民主化のあらゆる面において、常にキリスト教信者の影響がみられます。

また、台湾には50万人、14族の先住民族が存在していますが、彼らの法文化・法慣行はまさに現代のRJそのものとの結論に達しうることが、戦前の調査報告でなされています。つまり、台湾の先住民族は修復的精神の持ち主であるのです。

記念撮影こうして、台湾では修復的司法を導入するだけの土台を備えているといえます。

呉先生の熱心な語り口は90分という時間ではおさまりきれないものでした。時間の関係で、残念なことに途中で終了となってしまいましたが、それでも、学生にとってはもちろん、聴講した教員にとっても、有意義な講演会となりました。