日台交流国際研究会

 6月29日(金)、「『個』と国家」をテーマに、台湾大学法律学院との国際交流協定に基づく研究会が行なわれました。このような形式の研究会は2006年、2008年に続きこれで3度目です。今回は台湾大学法律学院の法理学専門の顔厥安教授をお招きしました。顔教授は法理学の他に憲法も専門とされ、台湾大学法律学院「人権と法理学」センターの主任も務めている方です。
 今回の研究会での2つの報告は以下の通りです。
 
 顔厥安(台湾大学) 「法概念と自然主義-台湾の民主化問題に関する法理学からの考察-」
 松田恵美子(名城大学) 「日本の母性保護論争について」
 
 顔教授の報告は、1980年代末から現在に至るまでの台湾の民主化の過程に見られる「法」の持つ意味の変化を検討するものでした。
 顔教授は憲法違反が争われた事件の分析を通じて、本来人々の権利と自由を守るためのものが法であったのが、次第にある目的のために法が設けられ、それが個人の自由を拘束する結果を引き起こしているのではないか、つまり「道具」としての法へと変化してきているのではないかと指摘しました。
 松田報告では、妊娠・出産期の女性の国家による保護は、女性の独立を妨げると主張する与謝野晶子と、国家による保護は当然であると主張する平塚らいてうの間でなされた大正時代の論争が紹介されました。
 
 いずれも「個人」と「国家」の関係という視点から「法」のあり方を問おうとするもので、台湾と日本の双方において、社会の複雑化の中で「法」というものをどう捉えるかが大きな課題となっていることが感じられました。