ドゥットゲ教授

 10月10日(木)、ドイツ連邦共和国ゲッティンゲン大学法学部より、グナー・ドゥットゲ教授をお迎えして、「ドイツ刑事訴訟における『取引(Deal)』――連邦憲法裁判所基本判決後の状況――」に関する講演を開催しました。通訳は本学の加藤克佳教授が務められました。
 
 ドイツ刑事手続においては、当初いわゆる取引的司法は法律上・表面上認められていませんでした。しかし、近年、実務では事件負担の増加等を理由に、水面下では事実上の司法取引がなされている実態が明らかにされてきました。そこで2009年、ドイツでは立法によりこのような現実を法制度化し、さらに本年2013年には連邦憲法裁判所において基本判決が出されたところです。
 
 本講演では、以上のような取引に関するこれまでの経緯が説明され、立法化された取引司法について、主に批判的な観点からの検討がなされました。具体的には、刑事訴訟の基本原理、手続の公正性・公開原則、黙秘権、裁判所の中立性等との関係において、現行取引司法には多くの問題点があること、さらには法律の定めから一部外れた実務運用がなされていることも各種データを用いて明らかにされました。
 
 聴講された学生の皆さんにとっては、やや専門性の高いお話しであったため、難しかったかもしれませんが、講演最後では日本やアメリカ合衆国との比較に関する質問もなされ、比較法的視点という面からも有意義な講演であったと思います。