「特設科目A(実践法教育)」(柳沢雄二教授、二本栁誠教授、萩野貴史准教授 担当)は、刑事裁判(主として裁判員裁判)の仕組みを学び、学生自身がシナリオ作成等に関わって、最終的に高校生をまじえて模擬裁判を実践する授業です。法学部の授業のほとんどは通常の教室で行われますが、この授業では模擬法廷教室を用い、学生が主体的に参加するアクティブラーニングを重視した教育を行っています。この授業の一環として、6月6日(月)の5時限目、関谷慶一郎弁護士(愛知県弁護士会)をお招きして「弁護士から見た刑事裁判の実情」という講演会を開催しました。
講演会では、刑事裁判に関わる裁判官、検察官、弁護士それぞれの目線や意見があるという前提を示されたうえで、弁護士の目線で刑事裁判の実情や問題点を詳しく解説してくださりました。
弁護士といえば、法廷に立ち、検察官と対峙する姿だけを思い描きがちです。しかし、この講演会では、弁護士の日常的な業務の全体像や、弁護士が刑事手続(警察の捜査段階から裁判所の判決が言い渡されるまで)の「どの段階」で「どのように」関わっていくかという点について、関谷弁護士の実体験を踏まえつつお話が展開されていきました。たとえば、被疑者が「先生、助けてください。今警察に囲まれている!」と電話してきた時にどのように対応したかといったエピソードなどは、まさに「リアルな現場」を感じるものでした。
また、関谷弁護士が普段から意識しておられる「弁護士としての心構え・注意点」に関するお話なども、法律の専門家の道を志す学生にとっては大きな参考やモチベーションの向上になったのではないかと思います。
さらに、法曹界を描いたドラマやマンガ、映画にも触れ、関谷弁護士のお薦めの作品も紹介されるなど、硬軟自在な講演の中で参加者から笑いが漏れる場面もありました。
質疑応答では、普段の授業ではなかなか知ることのできない「弁護士の世界の実情」に迫ろうとする学生の姿を見ることができました。参加した学生全員にとって、貴重な体験となったことは疑いがありませんが、今後の模擬裁判や進路選択にとっても大きな参考になったものと思われます。
5月27日(金)の2時限目に、「基礎演習Ⅰ」(代田清嗣准教授担当)の中で、名古屋市立大学教授の阪井芳貴先生をお招きし、「沖縄本土復帰50周年記念講演」を行いました。当日は基礎演習を受講する1年生のほか、代田准教授の「特設科目B(法文化3)」を受講する学生が参加しました。
講演は、本土復帰に向けた当時の沖縄の人々の思いや動きを中心に、近世以降、沖縄が軍事力によって生活を変化させられてきたことや、その中での法と政治のあり方や変化について、詳細な解説がなされました。また、沖縄の食文化や葬制などの伝統が、本土法の適用を受けることで影響を受けつつ現在まで存続してきたことが、阪井先生の見聞も交えながら紹介されました。
阪井先生は、「沖縄には、27年間の本土とは異なる戦後があることを忘れないでほしい」と、歴史や文化を踏まえて沖縄に向き合うことの重要性を強調しておられました。
講演の中では、本土復帰に関する貴重資料の写真が提示されたほか、新聞記事や雑誌、国立公文書館での企画展の図録などが阪井先生から回覧され、学生たちは熱心にそれらを見ていました。また、質疑応答の時間には、明治期の旧慣温存政策を沖縄の人々がどのように受け止めていたかについて質問がなされるなど、学生の関心の高さがうかがわれる講演となりました。