2012年4月5日(木)、名城大学法学会主催の講演会が開催されました。
テーマは、「刑事司法における素人―ドイツにおける現在の議論について」であり、講師は、グンナー・ドゥットゲ教授(ドイツ連邦共和国・ゲッティンゲン大学法学部)が務めました。また、コメンテイターとして、斎藤司准教授(龍谷大学法学部)が参加し、通訳は、加藤克佳教授(法学部)が行いました。新学期を控えた時期の開催でしたが、学生たち(学部生、大学院生)は積極的にこれに参加しました。
日本では、裁判員制度が、司法制度改革の柱の1つとして2009年5月にスタートしましたが、すでに3年近くが経過して多くの事例が蓄積されており、施行3年後には検証が行われることになっています。他方、ドイツでは、日本法のモデルの1つとして、参審制度が長い伝統を持ち、刑事司法に素人(国民ないし市民)が参加することが当然視されてきましたが、近時、改めて素人の参加の意義や功罪につき関心が高まっています。そこで、今回は、ドイツの現在の議論を紹介・分析し、素人参加の意義や限界、参加する場合のあるべき形態などについて講演していただき、コメンテイターからのコメントを受け、参加者と討議していただくこととしました。
ドゥットゲ教授の講演は、まず市民の司法参加制度の導入の経緯や制度趣旨などから始まり、法学の知識のない素人が正しい刑事裁判に寄与できるか、また、それが民主主義に適うかなどを検討し、その反面で、少なくとも無害といわれるが、費用面や読解能力・言語能力などから有害な面があると指摘しました。そのうえで、結論として、会計士や教師、医師など特別な専門知識を有する者を裁判官の正しい判断を導くため活用すべきであるとしました。
これを受けて、コメンテイターからは、市民参加の根拠や条件、日本では裁判員が量刑判断にも関与することをどのようにみるかなどが問題とされ、参加者からは、特に日本の裁判員制度との比較に関する質問が多数出され、全体として活発な討論が行われました。外国法との比較検討は、私たちの視野を広げるうえで有益であることを実感できるなど、実り多い講演会でした。