公務員になるためには、公務員試験に合格しなければならない。

「公務員になって国民や地域の人たちの役に立ちたい!」という気持ちがあっても、法律の知識や、それを活かす技能が伴っていなければ、国民や住民から信頼される存在にはなれませんよね。また、いくら勉強したといっても、客観的に試験に合格したという証明がなければ、公務員としての能力があることにはなりません。

憲法22条1項で「職業選択の自由」が保障されているとはいえ、すべての職業が自由に選べるわけではありません。一定の職業については、資格や許可を受けなければならないという制限が設けられています。それが、「公共の福祉」による制限です。

薬局営業をするためには、行政の許可を受けなければならない。

薬局の開設には、都道府県知事の許可が必要であり、さらにその許可は6年ごとに更新しなければならないとされています。

これは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称「薬機法」)という法律に定められており、不良な医薬品などの流通を規制するために必要な措置といえます。人体に影響が及ぼすおそれのある物品を扱っているため、こうした規制が課せられているのですね。

すでにある薬局から100m程度離れていなければ、新たに薬局を開設することができない。

薬局の開設に許可が必要であるとしても、さらに距離制限まで設ける必要があるのかが問題とされ、昭和50年の最高裁判決は、薬局に関する距離制限は憲法違反だと判断しました。

もともと距離制限が課されていた理由は、薬局が乱立すると過当競争によって経営が不安定になり、その結果、特定の地域では薬局がなくなってしまう可能性がある、という懸念からでした。

しかし、最高裁は、不良医薬品の流通を防ぐために薬局の開設に許可を必要とすることには合理性を認めたものの、距離制限はその “目的” を達成するために必要な “手段” とはいえないと判断しました。つまり、最高裁は、「目的を達成するための手段として必要といえるか」という判断を行ったわけです。

自由に対する制限の “目的” が正当であっても、それを達成する “手段” として適切かどうかという考え方は、法律の問題だけでなく、あなたの身の回りの問題を考える上でも重要な視点です。

これら以外にも、「アルコール飲料の販売をするには、行政の許可を受けなければならないのはなぜか?」「公衆浴場(銭湯など)の営業をするためには、行政の許可を受けなければならないのはなぜか?」など、職業選択の自由に対する制限は数多く存在しています。

法律の学習では、「違法か適法か」「裁判で勝ったかどうか」といった “結論” だけを見るのでなく、なぜそのような判断が示されたのかという “理由づけ” や “考え方” に注目することが大切です。そうした視点をもつことで、ルールに基づいて解決方法を考える「法的思考法」(「リーガル・マインド」とも呼ばれます)を身に付けることができ、あらゆる場面で論理的な問題の解決をすることができるようになります。

ぜひ、法学部での学びを通じて、社会に役立つ人材になるための素養を身に付けてください。