法学会講演会

 9月26日(水)、名城大学法学会主催の講演会が開催されました。
 講師は、ヘニング・ローゼナウ教授(ドイツ連邦共和国・アウクスブルク大学法学部)であり、テーマは、「ドイツ刑事手続における上告の基礎と限界」でした。名城大学法学部・大学院法学研究科は、アウクスブルク大学法学部と、同日の講演会前に学部間の国際学術交流協定調印式を行ったばかりで、今後本格的な学術交流が開始することとなっており、協定調印式のために来学された同学部副学部長のローゼナウ教授は、早速、学術交流に尽力してくださったことになります。また、通訳は、ごく最近まで同教授の下で客員教授をされていた辻本典央准教授(近畿大学法学部)に務めていただき、司会と質疑応答は、加藤克佳教授(法学部・大学院法学研究科)が担当しました。後期の授業が始まったばかりの多忙な時期の開催でしたが、多数の学生達が積極的に出席・参加しました。
 
 日本では、通常の刑事事件の第1審判決に不服があれば、控訴、上告することができる、いわゆる「三審制度」が採用されています。これに対し、ドイツでは、軽微な事件では三審制度が採られているものの、重大ないし中程度の事件では控訴審がなく、上告のみが可能な「二審制度」が採用されています。そこで、ドイツではなぜこのような制度が採られているのかという制度趣旨の説明から始まり、上告が統計上は年を経るごとに認められなくなっている現状とその原因、それへの対応策(上告を拡張する「拡張的上告」論の展開)、上告が「法令違反」に基づいていることを理由にしかできないことから生ずる問題点とその解決策などが論じられ、結論的には、現在の法律を改正する必要はないが、事実誤認を理由とする誤判・冤罪も十分に救済することができるような柔軟な法解釈と実務運用が、刑事裁判の高い品質を確保するために、上告と上告審裁判官に期待されているとして、日本法とも共通する問題が扱われました。
 
 参加者からは、とくに日本の上訴制度との比較をはじめとして、ドイツにおける事実誤認による誤判・冤罪の救済策のあり方、法改正の要否、この問題についての国民の立場・見方などにつき、多くの質問が出され、全体として活発な討議が行われました。外国法との比較検討は、私達の視野を広げるうえで有益であることをよく実感することができたといえ、また、国際学術交流の第一歩としても、成果の多い講演会になりました。